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中国建国60周年への想い―遥かなる大地を偲んで

 東アジアは龍と鳳凰の故郷で、昔から文化は種として自然の運びに生まれ、育み、そして栄えて来た。龍と鳳凰は共に調和の美と徳を備え、幸せな暮らしを求めようとする人々の願いを込めていた。龍は水のように流れ舞うし、鳳凰は日の如く再生を繰り返す。循環と再生はいのちの本流で、文化と文明の原点とも言える。
 中華の地で発祥する耕作文化は黄河と長江の流域を拠点に、自然との熾烈な闘いを経ながら創出し、東方の大地と海を跨って広めてきた。歴史のなかの漢と唐は世界の大国として君臨し、春秋の智恵と宇宙の理を持って四方を治めていた。紙、火薬、印刷、羅針盤の四大発明を世界に貢献しながら、いつの間にか四方から攻め込まれることになった。近代の中国は外強と内乱に翻弄され、生霊塗炭に強いられた人々は生きる喜びすら感じられなくなり、恐怖と震えに日々を過ごした。

1949年10月1日中華人民共和国誕生

 1949年10月1日、天安門広場に「中華人民共和国が誕生し、中華人民は世界の舞台に堂々と立ち上がりました。」と毛沢東が万人の前に宣言し、涙と喜びそして曙光が再び大地を照らし始めた。しかし、百年もの間を貧窮と空白に蹂躪されたこの大地を蘇生するには更に30年を要した。
 私の母親も中華人民共和国と同年に生れ、今年は還暦を迎える。小さい頃、母からの聞いた話によると、1960〜1961年頃、人々は飢えをしのぶために草と木の皮まで剥いて食べだと言う。多くの人は餓死し、尊いいのちが大地に枯れた。
 1978年からケ小平が中国の表舞台に登場し、中華人民共和国を改革開放路線に導く。「農業、工業、国防、科学技術」の四つの現代化を唱え、20世紀中に中国の国民経済を世界の前列に立たせる目標を決めた。1999年に中国は最後の植民地マカオを帰還させ、去年の2008年には百年の夢−北京オリンピックも見事に成功した。
 百年の時を経て中国はようやく半植民地半封建社会から抜け出し、独立、自尊の国となった。中華人民共和国は60年の新しい道を紆余曲折し、今は小康(初歩的豊かな社会)にたどり着いた。しかし、私の感ずる中国はまだまだ青少年期にある。還暦は一人の人生で再び零を刻む時ではあるが、広大な土地と世界の五分の1の人口を持つ中国にはこれから大きな使命と応えるべき試練を乗り越え、立派に成長しなければならない。なぜなら、世界は再び、循環と再生、そして自然を耕しながら共存の文化を育んできたこの土地と智恵が必要なのだ。
 中国は「和諧(調和)社会」を目指し、日本は「友愛」を信念とするならば東アジアはきっと滞りをなくして歩み寄り、世界をリードし、共生へと導く。
―いかなる矛盾も戦いも自らの内に実現すれば、遥か先祖の生息する大地に再び華彩が蘇る。

編集者より