採れたアワビを海士潜女神社へ奉納
鳥羽市国崎町は志摩半島の最東端に位置し、「志摩の国の先」にあることからなまってくざきと呼ぶ。北には石鏡町、南には相差町と隣接し、共に海女と漁師の港町として栄えてきた。
旧暦6月1日に行われる御潜(みかづき)神事は海女漁をし、身をそいで乾燥させた熨斗鮑を伊勢神宮に供える海女の祭り。過去には国崎を含めて答志村、神島村、菅島村、石鏡村、相差村、安乗村が参加して行われた志摩地方で一番大きな祭りとして知られる。明治4年11月の御贄献身制度の廃止に伴い盛大な神事は絶えてしまう。平成15年より132年ぶりに復活し、再び海へ潜る白い磯着姿の海女たちをみることができた。
長い歴史と伝統を持つ「熨斗鮑づくり」や海女漁をみずから確かめようと、7月1日の朝、鳥羽の海道にあたるパールロード経由で国崎へ赴いた。
朝の7時頃から地元の海女たちが次々と海女の祖である「おべん」を祀る海士潜女神社に参拝し、禁漁区域である前の浜へ集まった。午前9時、太鼓の合図に合わせて20人余りの海女たちが真っ白な磯着をまとい一斉に海へ潜る。1時間ほどの採取を終え、アワビやサザエ等は磯桶に積まれて浜揚げした。
前の浜に集まった海女たち
アワビを採った瞬間
採れたアワビは早速御料鰒調製所まで運ばれ、伝統技法を受け継いた長老たちによって熨斗鰒にする作業が続く。ちなみに国崎町の「熨斗鰒づくり」は平成16年に三重県無形民俗文化財に指定された。その後、大漁と安全を祈願して、雌雄一対のアワビが地元海士潜女神社へ奉納された。
浜揚げしたアワビ
熨斗アワビをする作業風景
国崎は潮流荒く岩礁の多い海域にあるため、アワビやサザエなど海の幸が育つ環境に適し、古くから海女の生活場として営んできた。海の恵みや時折の脅威をよく知っていた海女たちは日頃から自然に感謝と祈りを捧げ、それは海女の祭りと土地の文化として伝えてきた。
帰り道で私は、海女のように自然との触れ合いが多いほど、自然への有難さもよく感ずると思えた。そして、御潜神事は土地の個性としてずっと残すべきだと期する。